新しい生活への期待を胸に引っ越してきたあの日、私は早速お風呂に入ろうと準備を始めました。ところが、いくら蛇口をひねってもお湯が出てきません。水は勢いよく出るのに、お湯だけが全く出ないのです。「もしかして給湯器の電源が入っていない?」と思い、ベランダに設置されている給湯器のリモコンを確認しましたが、電源は確かに入っています。エラー表示もありません。途方に暮れかけたその時、ふと「元栓が閉まっているのかも」という考えが頭をよぎりました。前の住人が退去時に閉めていったのかもしれません。そこで、給湯栓を探すことにしました。しかし、これが思った以上に大変でした。以前住んでいたアパートでは、給湯器のすぐ下に分かりやすくバルブがあったのですが、今度の家では見当たりません。給湯器周りの配管をくまなく探しましたが、それらしいものは見つかりません。次に考えたのは、玄関脇にあるパイプスペースです。ガスメーターや水道メーターがある場所なら、給湯関連の栓もあるはずだと考えました。扉を開けて中を覗き込むと、確かに水道の元栓はすぐに見つかりました。しかし、給湯の元栓らしきものは、配管が入り組んでいてよく分かりません。しばらく懐中電灯で照らしながら格闘していると、水道メーターの奥、少し低い位置に小さなハンドルが付いているのを発見しました。「これか!」と思い、慎重に回してみると、かすかに水が流れる音が聞こえました。急いでお風呂場に戻り、蛇口をひねると、今度はちゃんと温かいお湯が出てきました。あの時の安堵感は今でも忘れられません。引っ越し直後は、電気やガスの開通手続きに気を取られがちですが、水回りの確認、特に給湯栓の場所を把握しておくことの重要性を痛感した出来事でした。もし同じように困っている方がいたら、諦めずに給湯器周りやパイプスペースの奥まで、丁寧に探してみてください。きっとどこかにあるはずです。