蛇口をきちんと閉めているはずなのに、ポタポタと水滴が落ちて止まらない。あるいは、ハンドルの根元からじわじわと水が漏れてくる。こうした水漏れの多くは、蛇口内部にある「パッキン」という部品の劣化が原因です。水道パッキンは、ゴムや樹脂などで作られたリング状またはコマ状の部品で、水の通り道で部品同士の隙間を埋め、水漏れを防ぐシール材としての重要な役割を担っています。しかし、パッキンは消耗品であり、長年使用していると弾力性が失われたり、摩耗したり、ひび割れたりして、その密閉機能が低下してしまいます。水道パッキンにはいくつかの種類があります。昔ながらのハンドルを回して水を出すタイプの蛇口(単水栓やツーハンドル混合栓)でよく使われるのが「コマパッキン(ケレップ)」です。スピンドルという部品の先端に取り付けられ、ハンドル操作によって上下し、水栓本体の弁座に密着することで水の流れを止めます。一方、シングルレバー混合栓など比較的新しいタイプの水栓では、「Oリング」と呼ばれる断面が円形のゴムリングが、可動部分の隙間からの水漏れを防ぐために複数使われています。また、レバー操作で水の量や温度を調節する心臓部である「バルブカートリッジ」内部にも、専用のパッキンが組み込まれています。パッキンが劣化する主な原因は経年劣化ですが、水道水に含まれる塩素やミネラル成分、お湯の使用による熱、そして蛇口の操作頻度なども劣化を早める要因となります。交換が必要なサインとしては、前述のポタポタという水漏れや、ハンドルの根元からの漏水のほか、ハンドル操作が以前より固くなったり、逆に軽くなりすぎたりする変化も挙げられます。水漏れは、放置すると水道代の無駄になるだけでなく、水栓本体のさらなる劣化や、漏れた水によるカビ、床材の腐食といった二次的な被害を引き起こす可能性もあります。パッキンの寿命は使用状況によって異なりますが、一般的には5年から10年程度が目安と言われています。水漏れの兆候が見られたら、悪化する前に早めにパッキンを交換することが、水道を快適に、そして経済的に使い続けるためのポイントです。