トイレの床の汚れやデザインが気になるけれど、本格的なリフォーム工事をする予算や時間がないという人にとって、既存の床の上に「置くだけ」で設置できるトイレ用の床シートやマットは、手軽にDIYできる便利なアイテムです。接着剤を使わずに敷くだけなので、賃貸住宅でも原状回復を気にせずに使えるというメリットがありますが、その構造ゆえに発生する衛生面でのデメリットについては十分な注意が必要です。最大の問題点は、シートと元の床との間に生じるわずかな隙間です。トイレは水回りであり、手洗いの際の水跳ねや、男性が立って用を足す際の尿の飛散、さらには冬場の結露などによって、床には常に水分が存在しやすい環境にあります。固定されていない「置くだけ」のシートの場合、端の隙間からこれらの水分や汚れが裏側に浸入してしまうことが避けられません。一度裏側に入り込んだ水分は、シートに遮られて蒸発しにくいため、湿気がこもり続け、カビや雑菌が爆発的に繁殖する温床となってしまいます。表面上は綺麗に見えていても、大掃除の際にシートをめくってみたら、裏側が黒カビでびっしりと覆われており、床材が変色していたり、強烈な悪臭を放っていたりするという事態は決して珍しくありません。また、置くだけのシートはズレやすいため、掃除機をかける際にめくれ上がってしまったり、高齢者や子供がつまずいて転倒したりする危険性もあります。特に、便器の曲線に合わせて自分でカットするタイプの場合、切り口がガタガタになって隙間ができやすく、そこから汚れが入り込むリスクがさらに高まります。衛生的なトイレ環境を維持するためには、定期的にシートを完全に剥がして裏側と床を掃除・乾燥させる手間が必要不可欠であり、「置くだけ」という言葉の手軽さとは裏腹に、維持管理には意外な労力がかかることを覚悟しなければなりません。
置くだけ床シートに潜むカビと衛生面のリスク